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記憶の彼方に眠る恋
第3章 事故

拓麻の母親が、沈んだ声色で答える。
「美香ちゃんから聞いたと思うけど……。身体的には単なる打撲程度に済んだ、ということが不幸中の幸いだけど、記憶を失くすという大変なことになってしまっていてね。事故から既に数日間は経ってるんだけど、記憶を取り戻す兆候すら今は見つからない状態で……」
「その……明日、早速、会いに行ってもいいですか?」
「紗友莉ちゃんの都合がよければ、是非お願いできる? 私たちとしても八方手を尽くしながら、どうにか拓麻の記憶を取り戻そうと試みてるんだけど、なかなか上手く行かなくて……。昔なじみの紗友莉ちゃんと会えば、もしかしたら何か少しだけでも、記憶の断片が戻ってきてくれるかもしれないし……」
紗友莉にとって意外なことに、このときの拓麻の母親の口調からは、以前のような「よそよそしさ」や「素っ気なさ」がほとんど消え去っているように感じられた。
また、こんなにすんなり、拓麻と自分が会うことを許可してくれたこと、しかもそれどころかむしろ「是非お願いできる?」と望んでくれている様子ということからも、「今までとは全く違う」という感想を抱いた紗友莉。
これはとりもなおさず、「拓麻の記憶を取り戻すことが最優先事項。そのためには、使える手段は何でもとりたい」という固い意志が、拓麻の両親にあるからだろう、と紗友莉にも分かった。
そして紗友莉も、その想いは同じだ。
紗友莉は翌日の午後から、拓麻に会いに行く約束を取り付けてから電話を切った。
底知れぬ不安と焦燥感、それに、「早く拓麻に会いたい」という強い想いを胸に抱いて。
「美香ちゃんから聞いたと思うけど……。身体的には単なる打撲程度に済んだ、ということが不幸中の幸いだけど、記憶を失くすという大変なことになってしまっていてね。事故から既に数日間は経ってるんだけど、記憶を取り戻す兆候すら今は見つからない状態で……」
「その……明日、早速、会いに行ってもいいですか?」
「紗友莉ちゃんの都合がよければ、是非お願いできる? 私たちとしても八方手を尽くしながら、どうにか拓麻の記憶を取り戻そうと試みてるんだけど、なかなか上手く行かなくて……。昔なじみの紗友莉ちゃんと会えば、もしかしたら何か少しだけでも、記憶の断片が戻ってきてくれるかもしれないし……」
紗友莉にとって意外なことに、このときの拓麻の母親の口調からは、以前のような「よそよそしさ」や「素っ気なさ」がほとんど消え去っているように感じられた。
また、こんなにすんなり、拓麻と自分が会うことを許可してくれたこと、しかもそれどころかむしろ「是非お願いできる?」と望んでくれている様子ということからも、「今までとは全く違う」という感想を抱いた紗友莉。
これはとりもなおさず、「拓麻の記憶を取り戻すことが最優先事項。そのためには、使える手段は何でもとりたい」という固い意志が、拓麻の両親にあるからだろう、と紗友莉にも分かった。
そして紗友莉も、その想いは同じだ。
紗友莉は翌日の午後から、拓麻に会いに行く約束を取り付けてから電話を切った。
底知れぬ不安と焦燥感、それに、「早く拓麻に会いたい」という強い想いを胸に抱いて。

