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くすくす姫と百人の婚約者(フィアンセ)
第5章 后の出産
書状が城に届いてから、数日後。
書状は遂に、城の最上階にある、副大臣の執務室にまで届きました。
ところが。
書状が届いたのは、后が産気付いた後だったのです。
ちょうど、后が産婆や長年仕えている侍女と共に産室に籠もり、王はわが子の誕生を今か今かと別室で待ちわびている頃でした。
副大臣は、代々王に仕えてきた家柄の出でもあり、王が幼い頃から近しくしてきた腹心でした。
后が産室に移ったと聞き、王の様子を少しだけ見に行こう・・・と思って立ち寄ったのですが、所在無くうろうろと部屋の中を行ったり来たりしている王から、帰ろうとするたびに何やかんやと引き止められ、席を立つことができなくなってしまいました。
(王はともかく、私はここに居る意味が何も無い上に、仕事が山積しているのだが)
そう思って王の方をちらっと眺めると、椅子に座っては突然立ち上がり、座るよう促されてはまた立ち上がるという、訳の分からない行動を繰り返しています。
(・・・まあ、致し方無いか)
副大臣は、目の前の落ち着きの無い「友」への長年の友情と、「王」に誓った忠誠に従って、彼が望む限り、共に待つことにしました。
やがて、初産ならではの長い長い時間が過ぎて。
長椅子で半分眠っていた副大臣と、青白い顔色で組み合わせた手の中を覗き込み、何やらぶつぶつ言っていた王のもとに。
后と王の初めての子の健やかな産声が、聞こえてきたのでした。
書状は遂に、城の最上階にある、副大臣の執務室にまで届きました。
ところが。
書状が届いたのは、后が産気付いた後だったのです。
ちょうど、后が産婆や長年仕えている侍女と共に産室に籠もり、王はわが子の誕生を今か今かと別室で待ちわびている頃でした。
副大臣は、代々王に仕えてきた家柄の出でもあり、王が幼い頃から近しくしてきた腹心でした。
后が産室に移ったと聞き、王の様子を少しだけ見に行こう・・・と思って立ち寄ったのですが、所在無くうろうろと部屋の中を行ったり来たりしている王から、帰ろうとするたびに何やかんやと引き止められ、席を立つことができなくなってしまいました。
(王はともかく、私はここに居る意味が何も無い上に、仕事が山積しているのだが)
そう思って王の方をちらっと眺めると、椅子に座っては突然立ち上がり、座るよう促されてはまた立ち上がるという、訳の分からない行動を繰り返しています。
(・・・まあ、致し方無いか)
副大臣は、目の前の落ち着きの無い「友」への長年の友情と、「王」に誓った忠誠に従って、彼が望む限り、共に待つことにしました。
やがて、初産ならではの長い長い時間が過ぎて。
長椅子で半分眠っていた副大臣と、青白い顔色で組み合わせた手の中を覗き込み、何やらぶつぶつ言っていた王のもとに。
后と王の初めての子の健やかな産声が、聞こえてきたのでした。