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くすくす姫と百人の婚約者(フィアンセ)
第40章 Happily ever after
「速攻ですね」
今まで飲んでたのはお茶では無かったのでしょうか、とレンブ姫のカップを片付けながら、バンシルが言いました。
「仕方ないわよ。しばらく『お茶』してなかっただろうしね」
スグリ姫は「お茶」にアクセントをつけて、弟が見たら「姉様、感じ悪い」と言われそうな、にやにや笑いを浮かべました。
「まあ、とんだ行き違いみたいだったけど、レンブお望みの『ドラマチック!』な気分が味わえたでしょうから、結果的には良かったかもね」
「万年ベッタベタで傍迷惑なカップルには、ちょうど宜しい刺激でしょうよ」
「…それにしても、」
スグリ姫は、先程ハンダマから貰ったカードを眺めました。
「…渾身の力作だわね、ハンダマ…」
見れば見るほど、これでもかこれでもか!というように細かく書き込まれて意匠を凝らされ、芸術品に近い趣です。
「レンブ姫様に袖にされて余った時間を全部注ぎ込んだんですかね」
ある意味写経みたいなものか、とバンシルは口に出さずに考えました。
(…ほんと、きれいだなー。サクナに早く見せたいなー)
無意識にそう考えてしまい、スグリ姫は切なさと恋しさでむずむずしました。
そんな姫を知ってか知らずか、片付けをしていたバンシルが、明るい声を上げました。
「姫様?これ、額装致しましょうか」
「そうね、バンシル!額装したら、披露宴と新居に飾ろうっと」
よろしゅうございますね、とバンシルに微笑まれ、姫も微笑み返しました。
それから姫は立ち上がって鏡台の近くに行き、三段目の引き出しを開けました。
中には乾いた果物細工と、薄く切って乾かしたオレンジを入れた、ガラスの瓶がありました。
(あ。サクナの匂いがする)
蓋を開けると、乾いたオレンジと、万が一にも腐らないようにとサクナが入れてくれたほんの少しの香辛料の混じった香りが漂いました。
そのまま瓶詰めを眺めていた姫は、中に一枚、ハートに切れてしまっているオレンジがあるのに気がついて、それを瓶から取り出しました。
(…大好きよ、サクナ。愛してる)
そう呟いたスグリ姫は、最後の婚約者が自分の元に無事に帰って来るおまじないか何かのように、ハートのオレンジに口づけて、また瓶の中に大事に大事にしまいました。
…And they lived happily ever after!
(そして二人はいつまでも幸せに暮らしましたとさ、おしまい!)
今まで飲んでたのはお茶では無かったのでしょうか、とレンブ姫のカップを片付けながら、バンシルが言いました。
「仕方ないわよ。しばらく『お茶』してなかっただろうしね」
スグリ姫は「お茶」にアクセントをつけて、弟が見たら「姉様、感じ悪い」と言われそうな、にやにや笑いを浮かべました。
「まあ、とんだ行き違いみたいだったけど、レンブお望みの『ドラマチック!』な気分が味わえたでしょうから、結果的には良かったかもね」
「万年ベッタベタで傍迷惑なカップルには、ちょうど宜しい刺激でしょうよ」
「…それにしても、」
スグリ姫は、先程ハンダマから貰ったカードを眺めました。
「…渾身の力作だわね、ハンダマ…」
見れば見るほど、これでもかこれでもか!というように細かく書き込まれて意匠を凝らされ、芸術品に近い趣です。
「レンブ姫様に袖にされて余った時間を全部注ぎ込んだんですかね」
ある意味写経みたいなものか、とバンシルは口に出さずに考えました。
(…ほんと、きれいだなー。サクナに早く見せたいなー)
無意識にそう考えてしまい、スグリ姫は切なさと恋しさでむずむずしました。
そんな姫を知ってか知らずか、片付けをしていたバンシルが、明るい声を上げました。
「姫様?これ、額装致しましょうか」
「そうね、バンシル!額装したら、披露宴と新居に飾ろうっと」
よろしゅうございますね、とバンシルに微笑まれ、姫も微笑み返しました。
それから姫は立ち上がって鏡台の近くに行き、三段目の引き出しを開けました。
中には乾いた果物細工と、薄く切って乾かしたオレンジを入れた、ガラスの瓶がありました。
(あ。サクナの匂いがする)
蓋を開けると、乾いたオレンジと、万が一にも腐らないようにとサクナが入れてくれたほんの少しの香辛料の混じった香りが漂いました。
そのまま瓶詰めを眺めていた姫は、中に一枚、ハートに切れてしまっているオレンジがあるのに気がついて、それを瓶から取り出しました。
(…大好きよ、サクナ。愛してる)
そう呟いたスグリ姫は、最後の婚約者が自分の元に無事に帰って来るおまじないか何かのように、ハートのオレンジに口づけて、また瓶の中に大事に大事にしまいました。
…And they lived happily ever after!
(そして二人はいつまでも幸せに暮らしましたとさ、おしまい!)