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第20章 輩後 章32第
画面には『幸』の文字が出ている。
こんな夜遅くに電話をかけてくる事はない。
今だって、幸の店である「radice」は営業中のはずだ。
不思議に思って電話に出ると、幸がどーもーと気の抜けた返事をした。
「なんだよ、こんな遅い時間に」
「相変わらず私には無愛想ね〜〜」
「……要件言えって」
正直今それどころじゃない。
イライラしてそう返すと、幸が「ちょっとうちに来てくれない?」と含みを持たせて言ってきた。
「なんでだよ」
今キャバクラになんか用事はない、が、もったいつける幸が少し気になる。
「泥酔しちゃったお客さんがね、帰れないみたいなのよ。だから来てくれない?」
「は??」
話が見えなくて、どういう意味だ、と言いかけたところでピンときた俺は、安堵も相まってはぁ〜とため息をついた。
「………桜、radiceにいるのか?」
「ご名答!! さすが彼氏さん!」
そんな冷やかしも最早反応する気が起きない。
とにかく、他の男のところに行ったりしてるわけじゃなくて良かった。
「すぐ行く」
それだけ言って電話を切ると俺は方向転換をして、幸の店、radiceへ向かった。