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第21章 現実


幸の店に来たのはしばらくぶり、だ。


店に入って中を見渡していると、ひょこっと顔を出して、おーと手を振ってきた男を見て俺は頭を掻いた。



「達也ーー! 元気かー?」



ニコニコと笑ってるこいつは、幸の店でボーイをしながら、最近は経営の手伝いもしている村田拓也。つまりは俺の兄貴だ。



「桜は?」


「おいー兄貴より彼女かよー」


「あ、おい、幸」



泣き真似をする兄貴をかわしていると、奥から幸が出てきた。


夜の女王ここにあり、って感じの出立ち。


いつも客としてうちの店に来る時とは全然違う。



「こっちよー」



そう言いながら、幸が歩き出す後に続く。



「……悪いな」


「全然大丈夫よ。わたしも桜ちゃんと呑めて本当に楽しかったから」


「そう…か」



桜が今日のことを何か話したかもしれない。


少しでも桜が不機嫌だった理由が知りたくて、幸に探りを入れようとすると逆に幸が、ねぇ、と声を掛けてきた。


「新しい子、入れたんですってね」


「ん? あ、あぁ」


「かわいいの?」


「かわいい??」



突然の意図の分からない質問に、オウム返ししながら、俺はうーんと考える。



「そんな風に見てなかったからアレだけど…、普通なんじゃねぇか?」


俺の返答に幸はふふふと笑う。


気味が悪くて、横目で様子を見ていると、ここよと個室に通された。




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