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第25章 ち持け掛 章72第
翌日の夜。
今日は桜は休みで葵だけのシフトで店を回したあと、俺は片付けをしながら客の机の上にある灰皿をじっと眺めた。
禁煙初日。
正直、馬鹿みたいに吸いたくて堪らない。
何かしていないと落ち着かないし、ソワソワして気が滅入る。
タバコの箱を掴んでは、桜の昨日の言葉を思い出して、手を離す、というのを繰り返している。
こうなってくると、なんで吸えないんだってことより、なんでそもそも俺はタバコを吸い始めたんだ…という後悔が止まらない。
確か最初は軽い気持ちだった。
性に合わないサラリーマン生活と、ぎこちなかった前の嫁との生活。
不意に先輩に誘われて喫煙所に行き、タバコをもらって……
もちろん、その時桜とは出会ってないし、こういう未来が来ることなんか想像すらついてなかった。
「葵ー」
「はい!」
「なんか、ガムとか持ってねーか」
「ガム?ですか」
「あぁ」
テーブルを拭く手を止めた葵は俺のことを見て首を傾げる。
やっぱり口寂しくて叶わない。
「ガムはないけど……飴なら!」
「……何でもいい、くれ」
キョトンとした葵は、「はい」と返事をするとポケットから飴玉の袋を取り出して俺に差し出した。
礼を言いながらパッケージもよく見ずにそれを開けて口に放り込む。
すると、途端に口の中で飴玉がしゅわしゅわと音を立てたので、「んっ!?」と思わず声を上げた。