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第26章 惑疑 章82第
目線の先、部屋の中でやはり人影が動く。
信じきれない俺が悪いのだろうか。
ここまで来てそんなお人好しな自分の考えを自嘲するように鼻で笑いながら、俺は柔い怒り任せに足を進めた。
終わりにしよう────…
こんなことでくよくよ悩み続けたくねぇ。
もういい歳したおっさんなんだ、俺は。
恋だとか愛だとかそんなものは────……
アパートの階段を上がった俺は、桜の部屋の前に立ち、インターホンに手を伸ばす。
その自分の手が躊躇いがちに震えているのを見て俺は一度ぎゅっと拳を握ると、頭を振る。
そして、息をふぅ…と吐くとそのまま呼び鈴を鳴らした。
ピンポーンという音の中で「はーい」という呑気な声が中から響く。
ゴクリと唾を飲んで居直ると、ガチャと音を立てて桜が扉の隙間から顔を出した。
カッとその大きな猫目を見開いている。
「えっ…なっ…なんで!?」
目の前にいるのは紛れもなく桜で……
「やっぱ、うそか」
俺の言葉に桜は明らかにパニックを起こしている。
目をあっちこっちに泳がせ、顔が『どうしようどうしようどうしようどうしよう』と叫んでいるのが分かる。