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赤い花~情欲の檻~
第4章 MemoriesⅢ
祥吾とのことがなければ、この紫陽花も初夏の美しい情景のひとこまとして映ったかもしれないが、今の美華子にはただ紫陽花が心ない雨に打たれ、うなだれ泣いているようにしか見えなかった。
それでも、花にはまだ救いがある。今年、誰に愛でられず散ってしまっても、また来年があるから。だが、生き身の女は盛りの時期に幾ら美しく花開いても、愛でる人がおらず時が過ぎれば、散っていくだけ。本物の花のように来年、また花咲かせることなんて、できはしない。