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赤い花~情欲の檻~
第3章 MemoriesⅡ
 刹那、美華子は自分でも信じられない行動に出た。祥吾の背に自らも両手を回し、力一杯抱きしめたのだ。小柄な美華子はいつもつま先立ちしなければ、祥吾とは同じ眼線になれない。いや、つま先立ちしたって、敵いっこないほど祥吾は上背があるのだ。
 今、美華子は精一杯伸び上がり、祥吾を引き寄せて、その唇に自分の唇を押し当てた。
タクシーの運転手は車内にとどまったままだが、もしかしたら、見えているかもしれない。しかし、この際、そんなことは問題ではなかった。どうでも良い。ただ、この男の心を私につなぎ止めておけるならば。
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