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甘党な愛
第15章 十五

* * *

 その晩、屋敷玄関の施錠をしながら、私は恵のことを考えていた。

「……」

 私を好きとか絶対嘘だ。あれから漸く腕を離してくれたものの、昼食の時も夕食の時も、会う度しつこく抱き付いてきてはキスしようとしてきた。盛りのついた猫のように。あれは……病気だ。女好きが女と会わなくなると、ああなってしまうんだな。身近な女で済ませようとして……。

「とりあえずは、距離を置こう……」

 鍵穴へ鍵を差し込むと、そのまま回そうとする。……が、急にドアが開いて誰かが入ってくると、私は背筋を凍り付かせた。

「あ~……ただいま~」

「誰っ……!?」

 薄暗くて顔は見えないが、声に聞き覚えがある気がする。でも葎も恵も屋敷にいるし、それ以外の人間だということは確実。

「泥棒……!」

 私は咄嗟に叫んだが、あまりの恐怖と混乱で鍵を落としてしまった。

「その声は……メイドか……」

「け、警察を……!」

「メイド……こっち来い」

 ドアが閉まる音と同時に何者かに手を引っ張られ、体に抱きつかれると怯える。

「やめろ……!」

 ヤバい。変態だ。大変だ。殺される……!

「メイド……キスして……」

 そのまま唇に何かが触れると、一瞬目を見開いた。

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