この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
甘党な愛
第1章 プロローグ
「まだ若いから次の仕事もすぐに見つかるよ~」
「若いと言っても、もう21だ!履歴書書くのも面接するのも面倒だし、本が好きだからここに就職したのに!」
「じゃあ別の書店を探しなよ。うちは無理だから。藤咲さんのような人、手に負えないよ」
「この根性なし……!」
私の悲痛な叫びと同時に、時計の針が六時を指した。その時計をチラッと確認すると、チビ髭眼鏡が中指で眼鏡をくいっと上げる。
「大体ね、お客様に向かってセイウチだのマッコウクジラだの言う方が間違ってるんだよ。分かる?」
「似ているから言っただけだ。それにあの客達は、禁止されている立ち読みの封を破って読んでいた」
「そういうところなんだよ!あ~もう、帰って!今日までの給料はちゃんと支払うから!」
チビ髭眼鏡は私が持っていた書店のエプロンを奪うと、そのまま休憩室から出ていく。一人残された私は、再び呆然と立ち尽くすしかなかった。