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蛍の想ひ人
第2章 た
「信くんは残酷なことを言うのね」
「この日にきちんと話すって前から決めていたからね」

そう。主任になることが俺たちの中で一つの区切りだった。

「主任になったら結婚すると約束してたんだよね?」
「あの人・・・・何でも、信くんに話していたのね。
私がヤキモチを妬くぐらい仲のいい兄弟だったものね」

悲しそうに優しく笑う。
アイツにしか向けないその顔に、今もまだ嫉妬している俺がいる。

「主任になる前に兄貴は死んだんだよ。由布子さんちゃんと分かってる?」
「分かってるわ」

「もう、戻ってこないんだよ!」
「・・・・」

「もし、俺に兄貴を重ねているんだったら、もう会えない」
「・・・・」

「俺をきちんと見てほしいんだ。
彼氏の弟の信くんじゃない。独りの男として、信之として俺を見てよ」
「・・・・」



「由布子さんを『ナツ』と呼んでいた兄貴はもういないんだ!」

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