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蛍の想ひ人
第2章 た
由布子さんはそっとワインを一口飲んだ。
兄貴と由布子さんは、高1からの付き合いで―――
その仲はみんなが羨む程だった。
兄貴は2つ下の俺を可愛がってくれて
たまにデートに一緒に連れて行ってくれた。
2人は結婚するものだと、誰しもが思っていた。
そう、兄貴がこの世を去るまでは。
2人は兄貴が主任になったら結婚しようと決めていた。
先延ばしなんかにしなければよかったのに。
兄貴は由布子さんと付き合って10年目にこの世を去った。
この会社は30か31で主任になる。
それまでお互いに仕事を頑張ろうと話しあったんだろう。
男女均等法が施行されたのも後押ししたのかもしれない。
「もう、博之がいないのは分かってるわ」
分かってなんかいないのは、その目が語っていた。
由布子さんは6年前に死んだ兄貴と今も2人で生きている。
兄貴は、人気者で男らしくて優しくて誰からも好かれる男だった。
俺も由布子さんも兄貴が大好きだった。
そんな兄貴の後を追って、同じ会社に入社した時は
2人でこの店でお祝いしてくれたんだっけ。
2人は自分たちの事のように喜んでくれて。
あの時は幸せだった。
由布子さんを好きだと思う気持ちはあったけど
兄貴に敵うはずもなく
兄貴と幸せそうに笑う由布子さんが好きだった。
兄貴と由布子さんは、高1からの付き合いで―――
その仲はみんなが羨む程だった。
兄貴は2つ下の俺を可愛がってくれて
たまにデートに一緒に連れて行ってくれた。
2人は結婚するものだと、誰しもが思っていた。
そう、兄貴がこの世を去るまでは。
2人は兄貴が主任になったら結婚しようと決めていた。
先延ばしなんかにしなければよかったのに。
兄貴は由布子さんと付き合って10年目にこの世を去った。
この会社は30か31で主任になる。
それまでお互いに仕事を頑張ろうと話しあったんだろう。
男女均等法が施行されたのも後押ししたのかもしれない。
「もう、博之がいないのは分かってるわ」
分かってなんかいないのは、その目が語っていた。
由布子さんは6年前に死んだ兄貴と今も2人で生きている。
兄貴は、人気者で男らしくて優しくて誰からも好かれる男だった。
俺も由布子さんも兄貴が大好きだった。
そんな兄貴の後を追って、同じ会社に入社した時は
2人でこの店でお祝いしてくれたんだっけ。
2人は自分たちの事のように喜んでくれて。
あの時は幸せだった。
由布子さんを好きだと思う気持ちはあったけど
兄貴に敵うはずもなく
兄貴と幸せそうに笑う由布子さんが好きだった。