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蛍の想ひ人
第2章 た
当時の2人にとって、この店での入社祝いはきっと奮発してくれたんだと思う。
それぐらい2人は俺の入社を喜んでくれて
俺も本当に嬉しかった。

幸せそうな2人と、その2人にいつもくっついている俺。
でも、そんな時間はそんなに長くは続かなかった。

「本当におめでとう~!
信くんもついに主任なんだね~」

俺が主任になることは、嬉しくもあり苦しくもあるんだろう。
それなのにお祝いしてくれてありがとう。

「俺ね?30歳なんだよ」

メインが終わって、デザートまでの穏やかな時間に
まだ飲み続けているワインの酔いも手伝ってそう切り出した。

「だよね。ビックリ。私も32だよ」

由布子さんは自分の時間を生きてはいない。
独りになってから時間が止まっているかのようだった。

表面上は明るく元気にふるまって
でも彼女は感情の時間が止まっている。

「俺ね。主任になったんだよ」
「うん。凄いよね~。本当に凄い」

由布子さんは目を細めた。

ねぇ・・・
ココにいるのは俺なんだよ?
俺を見てる?
由布子さんの目には俺がちゃんと映ってる?
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