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キミを愛シテ溺れてる
第1章 *キミを愛シテ溺れてる 1
その光景を見て無性に苛立った俺はすぐさま風子のもう片方の腕を引く。
異変を感じて男が振り返ってこちらを見た時、睨みつけて咄嗟の嘘を付いた。
「俺の彼女をどこに連れていくんですか?警察を呼びますよ」
風子に触れた罪として捕まえてもらいたいのは本当のことだけど。
しかし、これが効いたようで男はさっさと逃げて行った。
「ありがとうございます。助かりました」
怖い思いをしたのか涙目になりながらも笑顔で言ってくる。
そんな健気な彼女に真実を話すことにした。
「先週、乙羽さんが一晩一緒に過ごしたのは……俺だから」
本当のことを告げると風子は悲しそうな顔して大粒の涙を流し始める。
前にも泣かせたことがあるから、これで泣かせてしまったのは何度目だろう。
まだ片方の手で数えられるくらいだった気がする。
頬を伝う雫を見て、言わなければ良かったと後悔した。