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もう私、生徒じゃない
第10章 面影を重ねて
「もう春だね」



よく晴れた空を見上げてそう言った彼女に

俺は適当に返事をした記憶がある。



あの頃は色々うまくいってなくて

ひさびさに会えたのに自分の都合で

イライラして彼女に当たっていた。



そんなことはお見通しなのか

彼女は怒ったりする事もなく俺に抱きついてきた。



「友樹はよく頑張ってるね、よしよし」



そう言いながら回した手で俺の背中を撫でる。

その手が優しすぎて嫌なことぜんぶ

溶けて消えていく気がした。



「ありがとう…落ち着いた。」



そう伝えると彼女は離れていく。



「優しい私が飲み物を奢ってあげよう!

 ちょっと待ってて!」



そんなことを言って駆けていく。

俺はその背中を見送ってベンチに腰を下ろし

今日のデートプランを頭の中で組み立てる。



あの言葉が彼女の最後の言葉になるなんて知らずに。
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