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雪の日に祝福を・・・。
第14章 優しさに祝福を
薄情にも程がある。
気が付いたときには、もう遙か彼方にソレがあって走っても手を伸ばしてもどんな代償を申し出たとしても手に戻ることなどない。
なんと愚かな性格だろう。
引き留めて縋る術さえ持ち合わせていない我が身が今になってとても哀れに映る。
〝我が儘〟は、どうやってつけばいいのか・・・それさえも判らない。
ただ、あなたに〝逢いたい〟と思うことが〝我が儘〟ならいいのに。
《 《
「っ、ゲホッ」
ツバを飲み込むくらいでムセるようになった。
「若狭さん。」
「最悪・・・」
苦しんでいるときにタイミングよく現れた主治医に悪態をつく。
「減らず口だな。」
背中を擦りながら返す。
「うる、んっ・・・」
「(嚥下《エンゲ》障害が強くなってきたな。)」
彼女の病状が今は、手に取るように判る。