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籠鳥 ~溺愛~
第18章
(私のせいだ――私が高柳さんに泣き付いたから。でも、まさか秘書を解任するなんて――)
美冬はそう思うが、はたと止まる。
(本当に? 本当はこうなるって分かってたんじゃないの? 鏡哉さんが本気になれば自分の居所なんて簡単に分かる。そしてマンションを出る手助けをしたのが高柳さんだということも――)
血がすうと引いていく感じがした。
「……ごめん、なさい」
声を振り絞り、美冬は深々とこうべを垂れる。
(私は、ずるい。
高柳さんに迷惑がかかると分かって甘えてしまった。そして――
鏡哉さんがいなくなった私を連れ戻しに来るだろうことも)
「ごめんなさい」
頬に涙が伝う。
自分には泣く権利さえないというのに。
自分の狡(ずる)さが、嫌になる。
「謝るくらいなら、事情を説明して」
隣の高柳から厳しい声が降ってくる。
「どうして、学校に行っていない?」
「………」
「校門で待っていても美冬ちゃんに会えないから、学校に連絡したんだ。そしたら君は突然辞めると保護者から連絡が来たというし、アパートもいつの間にか解約されていたし……」
黙り込む美冬に、高柳が追及する。
「俺にはそれを聞く権利があると思うんだけれど?」
もっともな高柳の言い分に、美冬は答えようと思うのだがなんと説明すれば納得してもらえるのかと答えあぐねる。
「美冬ちゃん?」
「……大検、受けようかと思って」
やっと口を開いた美冬に、高柳がすっ飛んだ声を上げる。
「大検!? なんでそんなもの? 高校通えばいいだけなのに……ってまさか――」
言葉を切った高柳が、いきなり美冬の両肩に手をかける。
驚いて反射的に顔を上げた美冬の瞳を、高柳が射抜く。
「まさか、社長がそう言ったの?」
目を逸らそうと思うのに、高柳の視線が強すぎて逸らすことができない。
「ち、ちが――」
反論しようとした美冬の肩に、高柳の指が食い込む。
「何が違う!? 君に大検なんて発想が出てくるはずがないじゃないか」
「……痛っ」
高柳の力の強さに、美冬の顔が歪む。
「ご、ごめん」
慌てて手を放した高柳が美冬に詫びる。
吹き抜けの室内にしんと静寂が落ちる。