この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
籠鳥 ~溺愛~
第24章              

 携帯電話が掌から滑り落ちて絨毯敷きの床に落ちる。

 大学の学費と引き換えに別れることは別に何とも思わない。

 美冬は大学に行くのを夢見て頑張っていたのだ、それこそ寝食を犠牲にしてまで。

 だから「金に目がくらんで、自分と別れたのか」というような下世話なことは思わない。

 だが偽名を使っているとなると話は別だ。

 さすがに国外に出るとなると偽名を使うのは不可能だろうから、国外には出ていない筈だ。

 しかし都内ならまだしも東京を離れていた場合、偽名を使っている彼女を見つけ出すことは可能だろうか。

 そして財界で一二を争う自分の父親が関与しているのだ。

 その辺の興信所ごときが太刀打ちできるとは思えなかった。

 今更ながらに自分の置かれている立場が明確になり、鏡哉は愕然とする。

 震え始めた体をソファーに沈め、深く息を吐き出す。

 初めて本当に美冬を見つけられないかもしれないと思った。

 たまらなくなって目の前のワインボトルを手に取るが空になっていた。

 アルコールを入れてはやる気持ちを落ち着かせたかった。

 リビングの棚からブランデーを取り、グラスになみなみと注ぎ、口をつけた。

 バカラのグラスを持っている手が小刻みに震える

 瞼を閉じると美冬の笑顔が浮かぶ。

 頬を染め少しはにかんだような笑顔――。

 その笑顔をいつまでも独り占めできると思っていた、離れていくことなんて想像もできなかった。

「美冬――っ!」

 鏡哉の喉から苦しげにその名が零れる。  

 しかししんと静まり返った部屋には、その呼びかけに答えてくれる者はいなかった。






/188ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ