この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
籠鳥 ~溺愛~
第25章                    

「……お前……美冬に何を言った」

 鏡哉の低く怒りを殺した声が部屋に響く。

「当たり前のことを言っただけだ――高校に行きたくないのかと」

 その答えに鏡哉の眉が顰められる。

「あの子は行きたくないと言った。必死に否定してきた……」

「なら――」

「あんたが言わせたんだ。社長が美冬ちゃんにずっと、自分自身に嘘をつかせてきた」

「……嘘、だと……?」

 高柳の言葉に、鏡哉の胸の中が氷を当てられたように、すっと冷えた。

「………」

(自分が、美冬に嘘を付かせてきた?

 どうして自分達の間に嘘が必要なのだ。

 私達はこんなにも愛し合っているのに――)

「私は美冬のことを愛している……だから、失わないように、離れていかないように……」

(自分の腕の中に閉じ込めて――)

「……信じていないからじゃないのか、美冬ちゃんを」

 上から降ってきた言葉に、鏡哉はゆっくりと顔を上げる。

「あんたは最初から彼女を信じてやれなかった。愛していると口で言っていても、拘束していないとどこかへ行って自分の元へ戻らないと、信じてやれなかった……」

「……ちがう」

 高柳と合わせていた瞳が震える。

「何が違う? あんたは口先だけだ」

 高柳の言葉が深く胸を抉(えぐ)る。

「違う違う違うっ!」

 鏡哉が耳を抑え、大声でわめく。

 溜息をついて膝を折った高柳がその両手をゆっくりと外した。

「あの子は、貴方が失った従妹とは違う――生きているんだ」

 顔を歪ませた鏡哉が首を振る。

「そして、貴方も生きている。もういい加減自分を信じて、自分も彼女も開放してやれ」

 握られた両腕から高柳の温かい体温が伝わってくる。

 落ち着いた高柳の声でぐちゃぐちゃになった頭の中が、少しずつ静かになっていくのが分かった。

 だらりと体の力を抜いた鏡哉に、高柳が続ける。

「あの子はこう言ったんです……『このままだと、私も鏡哉さんもダメになる』って」

「………」

 混乱した思考の中で必死に考えてみる。

 果たして自分はこれから美冬をどうしていただろうかと。

(愛していると甘く囁いて、見えない枷で拘束し、一時も自分の箱庭から離れることを許さなかった……)

 彼女の望む大学に行かせることも、その先に望む職に就くことも――。

/188ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ