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籠鳥 ~溺愛~
第26章                     

 その日からしばらくの間、セリナのニュースはワイドショーの話題に上った。

 ある局では「結婚間近」とまで報道していた。

 一報から数日後、高柳から手紙が届いた。

 きっと中には報道は誤解だという説明が書かれているのだろう。

 しかし、美冬は怖くて手紙を開封することができなかった。

 もし二人は付き合っているという内容だったら、と思うと恐ろしくて読むことができず、それ以降も届いた手紙は開封されることなく引き出しの奥に仕舞われている。





 季節が過ぎ、夏が来た。

 鹿児島の夏は干上がりそうなほど熱い。

 放課後、美冬は空調のきいた教室の窓際の席に座り、蜃気楼を上げる校庭とその先にある校門をぼんやりと見下ろしていた。

 机の上に腕を組んで、その上に小さな頭をこつんと乗せる。

 ゆっくりと目を閉じると、ちょうど一年前の今日のことがありありと思い出された。

 いきなり校門に車で現れた鏡哉は、美冬を着せ替えフレンチレストランへと連れ出した。

 天井から降り注ぐキラキラしたシャンデリアの光と、その下で楽しそうにこちらを伺う鏡哉の姿。

 突然現れた女性にやきもちを焼いた揚句、子供っぽい態度をとってしまった自分。

 あの日、鏡哉に「愛おしい」と言われ、美冬は鏡哉への気持ちに気が付いたのだ。

 懐かしい、とても大切な思い出。

 ゆっくりと瞼を上げる。

 しかし見下ろす外の風景が変わることはない。

「信じてる……」

 誰もいない教室に、美冬の声だけがする。

 熱愛報道以降、美冬は不安になるとそう呟くことが癖になっていた。    

 重い頭を上げると鞄を取り、誰も待っていない校門へ向かって歩き出した。




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