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籠鳥 ~溺愛~
第26章                     

 そう同意を求めてこちらを振り返った皐月だったが、反応のない美冬を不思議そうに見つめた。

「美冬? どうしたの、ちょっと顔色悪いよ?」

 皐月が手を伸ばして美冬のおでこに触れる。

「熱はないみたいだけど……」

「……ごめん、ちょっと貧血……」

 なんとか声を振り絞りそう答えた美冬から、皐月が手を放す。

「ご飯食べれる?」

「ううん、ごめん……部屋、戻るね」

 そう言って踵を返した美冬を、皐月が心配そうな表情で見送っていた。

 部屋に戻り、ベッドの上に倒れこむ。

 上掛けにくるまると、今見たものを頭の中で反芻した。

 鏡哉の腕に自分のそれを絡ませ、ホテルらしきところから出てきたセリナの写真。

 二人は笑顔だった。

「………」

(付き合ってる、のかな……)

 本当に貧血になったのか、頭から血が引いていく気持ち悪い感覚に目をギュッと瞑って耐える。

『付き合ってるにきまってるでしょ』

 頭の中に、誰かの声が聞こえる。

(嘘、私は信じない!)

 美冬は痛み始めた頭を押さえ、必死に言い返す。

『あれから半年たったのよ。鏡哉だって逃げ続けるあんたに愛想を尽かしたのよ』

(そんなことない! 鏡哉さんはちゃんと私の気持ち、分かってくれているはず!)

『馬鹿ね、あんな手紙一通残して消えたあんたのことなんて、忘れてるって』

(ちがう! 私は二人の将来を考えて――)

『鏡哉がいつまでも自分だけを愛し続けてくれるって、本当に思ってるの?』

(………)

 胸がぎゅうと締め付けられる。

(だって――)

「だって、鏡哉さんは、愛しているって言ってくれた……」

 掠れた声が上掛けの中から漏れる。

 自分の体を自分の腕で抱きしめる。





(信じなきゃ。信じなきゃ。

 鏡哉さんを信じなきゃ――)





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