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籠鳥 ~溺愛~
第28章
「どうする、とは?」
二人の冷たさを感じるやり取りが続く。
「分かっているだろう。中国の市場も伸び悩んでいるし、インドもまだまだだ」
帰国したそうそう暗にそのどちらかに行けと匂わせる鷹哉に、高柳は鏡哉がぶち切れるのではないかと心配し、鏡哉を見つめた。
しかし彼の発した答えは意外なものだった。
「少し、考えさせてください」
その顔は無表情で、感情が見えない。
(……社長?)
「分かった。取り敢えず明日からは本社に出社して、役員会議に顔を出すように」
「分かりました」
そう言って鏡哉は礼をすると、プレジデントルームから出て行った。
高柳もその背を追いかけようとした時、鷹哉に呼び止められた。
「なんでしょう?」
「あれは、鏡哉はむこうで女は出来たのか?」
意外な質問に高柳の頬が緩む。
「いいえ。社長はゲイで通していましたから」
笑いをかみ殺しながらそう言うと、鷹哉は呆れた顔をする。
「よく言う。あの歌手との噂をもみ消すのは大変だったんだぞ」
「ああ、あれは結構面倒でした。セリナのほうが社長にご執心で……諦めてもらうのに苦労しました」
しつこく鏡哉に付きまとったセリナは「一度食事してくれたら諦めるから!」と言い出したので、最後は折れた鏡哉と食事に行ったのだが、そこを運悪くパパラッチにとられてしまったのだ。
大げさに肩を竦めた高柳に、鷹哉はそれ以上追及しなかった。
「これを」
鷹哉が座ったまま高柳に何かを差し出す。
近寄って受け取った高柳は不思議そうに鷹哉を見返す。
「お前が持っておいてくれ」
中を確認した高柳はにやっと笑うと「かしこまりました」と答え、苦虫を噛み潰した様な表情の鷹哉を背にプレジデントルームを後にした。
部屋を出ると他の役員に挨拶を済ませたらしい鏡哉と鉢合わせした。
「マンションにお帰りになりますか?」
そう尋ねると、鏡哉は頷いた。
いつになく無口な鏡哉をリムジンでマンションまで送り、高柳は部屋まで付いて行った。
部屋に当たり前のように上り込む高柳を、鏡哉はソファーに腰を下ろして見上げた。
「なんだ?」