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籠鳥 ~溺愛~
第28章

鏡哉は立ち上がると、ワインセラーからワインを取出す。
高柳はそれを受け取るとコルクを抜き、持ってきたワイングラスに注いだ。
芳醇な赤ワインを口にしながら、高柳は鏡哉を見つける。
(そういうことか)
グラスをローテーブルに置くと、高柳はにやりと笑う。
「じゃあ俺、今から美冬ちゃんに会ってきます。綺麗になってるだろうな〜美冬ちゃん。貴方のことなんか忘れて、俺に惚れちゃったりして」
そう言って焚き付けようとしたが、鏡哉はふんと鼻から息を漏らす。
「勝手にしろ」
(おや、ダメか)
高柳はもう一口ワインを飲むと、口を開く。
「貴方はどうなんですか?」
「……どうとは?」
「三年半で美冬ちゃんを忘れることができたのですか?」
その質問に鏡哉は息を吐き出すと、首を振った。
「美冬ちゃんだって同じですよ」
そう言ってやったが、鏡哉はまた首を振った。
「私は美冬の将来を潰そうとした。愛していると口では言いながら、自分勝手に自分の愛情をあの子に押し付けただけだった」
心の奥を吐露する鏡哉を高柳は静かに見守る。
「美冬はきっと……私が美冬を愛しているといった言葉を、信じていない……」
静かにそう言い切った鏡哉を、高柳はもやもやした気分で見つめた。
「あの子は信じています、貴方の愛情を。だからあの時、離れようと決意したんじゃないですか」
「いや……きっと私から離れたかっただけなんだ。もうきっと私のことなんて思い出したくないに違いない」
鏡哉はそう言ってワインを煽る。
高柳は女の腐ったようなことを言い続ける鏡哉に、いい加減もやもやが頂点に達しそうだった。
(信じられない。これがあの自信に満ちたカリスマ経営者か?)
「ったくあんたは、29にもなって、人に背を押してもらえないと好きな女にも会いに行けないのか?」
いきなり言葉が砕けた高柳に、鏡哉は沈黙し反応しない。
「ああ゛っ!! もう、どんだけ不器用なんだ、あんたらは――!」
ついに切れた高柳が大声を上げる。
そして胸の中から二通の封書を取り出した。
視線を落とした鏡哉の前にその封書を並べて置いた。
鏡哉の瞳がその一つに止まり、持ち上げて宛名と差出人を確認した。

