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籠鳥 ~溺愛~
第2章  

「き、鏡哉さん? なんですか、この車!」

 落ち着きなく浅く腰掛けた美冬は、あわあわと鏡哉に尋ねる。

「ああ、これ? 社用車なんだ。この車のほうが私のベンツより大きくて、たくさん荷物が運べるだろう?」

(た、たしかに、段ボール何個も入りそうだけど――っていうか、リムジンに段ボールって似合わない……それより何より、セーラー服の私が似合わない)

「す、すみません。何から何まで――」

 美冬はひたすら恐縮して縮こまる。

 今更ながらに自分はとんでもない人の家政婦をしているのだと、美冬は自覚した。

 美冬のマンションに到着すると、美冬は急いで当面の生活用具と服を見繕い段ボールに詰めた。

 それでも切り詰めた生活をしていた美鈴の荷物は、段ボール2つ分にしかならなかった。

 荷物を載せて車を鏡哉のマンションへ向かわせると、鏡哉は美冬に振り返った。

「少ないな。今週末、服買いに行くぞ」

「え……ええ〜〜っ!?」

「なんだ、いやなのか?」

「嫌というか、私はただの家政婦なので、そんなお気遣いは――」

「いいのいいの、社長のやりたいようにやらせてあげて下さい。この人、言い出したら聞かないから」

 いきなり今まで黙っていた助手席の男性が口を開いた。

「申し遅れました、私、秘書の高柳と申します。美冬様、以後お見知りお気を」

「見知っとかなくていい」

 鏡哉は苦い顔でぼそっと呟く。

「あ、こちらこそ。鈴木美冬です。あの、様はやめてもらえませんでしょうか?」

 ただの家政婦に様付けで呼ぶなど、どう考えてもおかしい。

「じゃあ、美冬ちゃんで。いいですか社長?」

「……勝手にしろ」

 そんなやり取りをしていると、リムジンはマンションの前に到着した。

 荘厳な車寄せに止められ、外からホテルのドアマンのような男性にドアを開けられる。

「お帰りなさいませ、新堂様」

「荷物があるんだ、運んでおいてくれ」

「かしこまりました」

「え、自分で運びますよ?」

 慌ててそう言う美冬の手を取って、鏡哉は車から降りる。

「社長、では明日は朝一から会議ですので」

「わかった。ご苦労さん」

 高柳はそう言い残して、リムジンで去って行った。

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