この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
籠鳥 ~溺愛~
第2章
「き、鏡哉さん? なんですか、この車!」
落ち着きなく浅く腰掛けた美冬は、あわあわと鏡哉に尋ねる。
「ああ、これ? 社用車なんだ。この車のほうが私のベンツより大きくて、たくさん荷物が運べるだろう?」
(た、たしかに、段ボール何個も入りそうだけど――っていうか、リムジンに段ボールって似合わない……それより何より、セーラー服の私が似合わない)
「す、すみません。何から何まで――」
美冬はひたすら恐縮して縮こまる。
今更ながらに自分はとんでもない人の家政婦をしているのだと、美冬は自覚した。
美冬のマンションに到着すると、美冬は急いで当面の生活用具と服を見繕い段ボールに詰めた。
それでも切り詰めた生活をしていた美鈴の荷物は、段ボール2つ分にしかならなかった。
荷物を載せて車を鏡哉のマンションへ向かわせると、鏡哉は美冬に振り返った。
「少ないな。今週末、服買いに行くぞ」
「え……ええ〜〜っ!?」
「なんだ、いやなのか?」
「嫌というか、私はただの家政婦なので、そんなお気遣いは――」
「いいのいいの、社長のやりたいようにやらせてあげて下さい。この人、言い出したら聞かないから」
いきなり今まで黙っていた助手席の男性が口を開いた。
「申し遅れました、私、秘書の高柳と申します。美冬様、以後お見知りお気を」
「見知っとかなくていい」
鏡哉は苦い顔でぼそっと呟く。
「あ、こちらこそ。鈴木美冬です。あの、様はやめてもらえませんでしょうか?」
ただの家政婦に様付けで呼ぶなど、どう考えてもおかしい。
「じゃあ、美冬ちゃんで。いいですか社長?」
「……勝手にしろ」
そんなやり取りをしていると、リムジンはマンションの前に到着した。
荘厳な車寄せに止められ、外からホテルのドアマンのような男性にドアを開けられる。
「お帰りなさいませ、新堂様」
「荷物があるんだ、運んでおいてくれ」
「かしこまりました」
「え、自分で運びますよ?」
慌ててそう言う美冬の手を取って、鏡哉は車から降りる。
「社長、では明日は朝一から会議ですので」
「わかった。ご苦労さん」
高柳はそう言い残して、リムジンで去って行った。