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籠鳥 ~溺愛~
第2章
「君はこっち――」
手を引かれて連れて行かれたのは、マンションに併設されているいかにも高級そうなスーパーだった。
「このカードを渡しておくから、これからはここで買い物するといい」
「は、はあ……」
ようやく手を放した鏡哉は、胸から財布を取り出し部屋番号が書かれたカードを抜き取って美冬に渡した。
「どうした?」
「い、いえ。ほんとホテルみたいだなあと」
「そうか?」
「え、ええ。ところで、今夜何か食べたいものはありますか?」
背の高い鏡哉を見上げてそう尋ねる。
「そうだなあ……鍋、かな」
「え、そんなのでいいんですか? もっと手の込んだものを用意しますよ?」
「いいんだ。今日寒いし」
鏡哉はそういうと、カートに籠をセットして歩き出す。
「あ、自分一人で買い物しますよ? 鏡哉さんは先にお部屋で休まれては?」
「いいよ、部屋にいても暇だし」
鏡哉はそう言ってめぼしい食材をぽいぽいと籠に放っていく。
大きなハマグリ、有頭エビ、カニなどなど。
(た、高っ!!)
思わず確認してしまった値札に、美冬は度肝を抜かれる。
あっけにとられている間に買い物が終了し、鏡哉はレジで部屋まで運ぶように頼んでエレベーターに乗り込んだ。
(う〜ん、世界が違いすぎる)
ぼ〜っとしていると、鏡哉が美冬を覗き込んでいた。
「明日からはあんまり付き合えないんだが、一人で大丈夫そう?」
少し心配そうに尋ねてくる鏡哉に、美冬はぶんぶんと首を振ってうなずいた。
部屋に戻ると既に段ボールが運び込まれていた。
鏡哉に促されて自分にあてがわれている部屋に荷物を片付ける。
(ほんとに私、ここに住み込むんだな〜)
整理はすぐさま終わり、制服から私服に着替えてリビングに顔を出すと、ソファーに座った鏡哉がノートパソコンを見つめていた。
「あ、終わった?」
「はい。鏡哉さん、お仕事ですか?」
「いや、メールチェックしてただけ。じゃあ、掃除しようか」
鏡哉はそう言うとノートパソコンを閉じて立ち上がった。
「え? 一人でできますよ、掃除くらい……と言いますか、私の仕事ですし」
「いいのいいの、二人でやったほうが早いし」
鏡哉は掃除用具の置き場を教えると、ハンディーモップを持って掃除し始めた。