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籠鳥 ~溺愛~
第4章
鏡哉は壁についていた腕を離すと、壊れ物を扱うようにそっと美冬を抱き上げた。
お尻の下に腕を回され持ち上げられたので、目線が鏡哉と同じになる。
「き、鏡哉さんっ?」
息が唇に掛るくらい近い。
おでこをこつんと当てられ、視線を合わされる。
「じゃあ、しょうがないから行ってくる。お土産に寿司折り持って帰ってくるから、いい子で待っているんだよ」
鏡哉はまるで小さい子に言い聞かせるようにそう言うと、美冬の頬に軽くキスを落とした。
そして美冬を下すと、高柳を連れて嵐のように去って行った。
美冬はというとあまりの恥ずかしさにその場に突っ伏して数十分もそこから動けなかったのだが、それは鏡哉の知るところではない。
(……私はなぜ、こんなところにいるのだろう?)
美冬はフォークとナイフを握りながら、自分の今置かれた状況に内心首をひねる。
3時間前。
学校が終わっていつものように真っ直ぐマンションへと戻ろうとした美冬の前に、鏡哉のベンツが行き先をふさぐように止まった。
「乗って、美冬ちゃん」
少し急いだ感じにそう言われ、美冬は条件反射で急いで助手席に乗り込んだ。
車はすぐに発進する。
「どうしたんですか、鏡哉さん?」
「ちょっと付き合ってほしいところがあるんだ、いい?」
「はあ、大丈夫ですが」
特に理由を説明されずにつれて行かれた場所は、六本木ヒルズだった。
駐車場に車を止めるとすぐさま手を引かれ、一軒のブティックの前に立つ。
「服、買われるんですか?」
「うん」
ドアマンに開けられ中に入ると、シックな黒いスーツに身を包んだ女性店員達の視線が、一気に自分達に集まる。
そりゃあそうだろう。
六本木の一等地に立ち、ファッションに疎い美冬でも知っている世界的に有名なブランド店に、モデルのように完璧な鏡哉と、どっからどう見ても中学生にしか見えないセーラー服姿の美冬が入ってきたのだ。
関係を詮索しないほうがおかしいというものだ。
あまりにも自分にそぐわない場所に気後れして、美冬はとっさに下を向いてしまう。
しかし鏡哉は気にすることなく店員に声をかけると、美冬の手を引いてどんどん奥へと入っていく。