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籠鳥 ~溺愛~
第4章

先ほどの店員に手を取られ、近くのスツールに腰を下ろされる。
なぜか長い髪の毛をブラッシングされ、白いリボンのついたカチューシャをされた。
「完璧だ。カメラ持ってくれば良かった」
いつの間にか傍に立っていた鏡哉がそうつぶやく。
その言葉に店員たちがクスクスと笑い、美冬は顔が火照る。
「鏡哉さん、着せ替えごっこがしたかったんですか?」
「うん。じゃあこのまま行くよ」
(はあ、この人に抵抗しても無理とは分かっているんだけど)
「……なんかよく分かりませんが、今日だけですよ?」
鏡哉の気まぐれに今日一日付き合えば、もう自分に不相応な服の贈り物もやめてくれるだろうと、美冬はあきらめて立ち上がる。
鏡哉はいつの間にかお会計を済ませていたらしく、包んでもらった制服を手に、ブティックを後にした。
履きなれないヒールのためどうしても歩くスピードがゆっくりになってしまう美冬に、鏡哉は付き合ってゆっくり歩いてくれる。
横断歩道を渡ってしばらくすると、一軒の白亜の邸宅が目に飛び込んでくる。
すっかり日が落ちた今、ほんのりとライトアップされた邸宅は、水色のようにも見えた。
鏡哉は迷いもなくすたすたとその邸宅に近づいた。
(え、鏡哉さん、もしかして――)
「いらっしゃいませ、新堂様」
ドアマンが美冬たちにそう挨拶し、扉を開けてくれる。
その先はシックな落ち着いた色合いのウェイティングバーとなっていた。
磨き上げられたアンティークの家具たちが、存在を主張するように光り輝く。
あまりにも自分に不相応な場所に気後れし、美冬はぎゅっと鏡哉の手を握り返してしまった。
「大丈夫、私がいるから」
にっこりと微笑まれ、美冬は成す術がなくすすめられた椅子に腰を下ろした。
「すぐお席にご案内いたしますので、しばらくお待ちください」
光沢のあるスーツを纏ったウェイターが、鏡哉から制服の入った袋を預かり、消えていく。
「き、鏡哉さん。どういうことですか?」
「うん? お腹すかない?」
「す、空きましたけど。こんな所に連れてきてもらう義理はないです。だって、私は――」
家政婦なのに――。
そう言おうととした時、先ほどのウェイターが戻ってきた。

