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籠鳥 ~溺愛~
第8章
青く澄み渡る空に白い入道雲が浮かびゆっくりと流れていく様を、美冬は絨毯敷きのリビングの床にあおむけに寝転がりながらガラス戸越しに眺めていた。
重厚な作りのガラス戸は、鳥の鳴き声一つでさえ通さず、部屋の中はしんと静まり返っている。
くすり。
(ずる休みも三日を超えたら、さすがに先生にもばれちゃうよね――)
今まで成績優秀、品行方正で通してきた美冬は自分の不良ぶりに、自嘲気味に笑う。
三日も家にいるとさすがにすることがなくなる。
最初のうちは部屋の大掃除をしていたのだがそれも初日で終わってしまい、美冬はお腹が空いたら食べ、眠たくなったら寝てという生活を繰り返していた。
眠るといっても睡眠はなぜか浅く、美冬は日に何度もうつらうつらとしてしまう。
また眠ってしまったのだろう。
重い瞼を何回かしばたいて、ゆっくりと目を開く。
気が付くと日が陰り、夕立が降り始めていた。
ぽつぽつと降ってくる雨を寝ころんだまま見上げる。
(そういえば、昔、和室に寝転がって上から雪が降ってくるのを見るのが好きだったな……)
まだ、あの頃は両親が生きていて、自分は何不自由なく幸せに暮らしていた。
でも、あの頃にはなかったものがある。
鏡哉へのこの気持ち――。
大事で、大切なこの気持ち。
瞼を閉じればいつでも鏡哉の顔を思い浮かべることは出来る。
少し意地悪そうに口角を上げた表情。
「………」
また、うつらうつらとし始めた時。
ガチャリ。
扉を開く音が聞こえた。
誰もいない筈のリビングの扉を開き、真っ先に目に飛び込んで来たのは窓際に寝転んでいる美冬の姿だった。
倒れているのかと荷物を放り出してそばに駆け寄ったが、スースーという規則正しい寝息が聞こえてきた。
白いワンピースの胸が上下しているのが目に入り、鏡哉はとっさに視線を逸らした。
(どうして……まだ16時なのに)
まだ学校の時間のはずだったから鏡哉は荷物を取りに戻ったのだが、美冬はそこに居た。
半月ぶりに会った美冬は一回り小さく感じた。
もしかしたら自分のことを責めて、痩せてしまったのかもしれない。