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籠鳥 ~溺愛~
第9章
ふと気が付いて美冬の学校へ電話をかける。
美冬が今日休む旨を担任に伝えると、心配そうな返事が返ってきた。
「鈴木さん、大丈夫でしょうか。もう4日目ですものね」
(……そんなに休んでいたのか。どうして――)
「………」
「新堂さん?」
急に沈黙した鏡哉に担任が不思議そうに問い直す。
「すみません。来週には登校できると思いますので」
そう言って鏡哉は電話を切った。
美冬の寝ている客間へと足を向けると、美冬はまだ気を失ったように寝ていた。
『会社に行ってくる』と書置きを残すと、白い額に口づけを落してマンションを後にした。
鏡哉がマンションを出た数時間後、美冬は意識を取り戻した。
ベッドから這い出そうとしただけで、全身の関節に鈍い痛みが走る。
いったい何時間、鏡哉に抱かれていたのだろう。
最後のほうは全く記憶になかった。
窓からはレースのカーテン越しに西日が差しこんでいた。
ベッドサイドのサイドテーブルに目をやると、会社に行ってくるという書置きが目に入った。
痛む体をなんとか鞭打って、ベッドから出ようとしたその時。
どろり。
自分の体の中心から、何かがあふれ出す。
「きゃっ!」
そそうをしたのだろうかと焦って確認すると、そこからは白濁した粘液が零れ落ちていた。
「……鏡哉さん、の?」
すぐさま『妊娠』という言葉が頭の中を駆け巡る。
しかしすぐに美冬はそれを否定した。
排卵日については保健の授業で習ったことがあった。
美冬は生理を終えたばかりだった。
シーツをはがして体に巻きつけると、美冬は重い足取りでバスルームへと向かった。
だるさと痛みで時間はかかったが身だしなみを整え、ベッドのシーツを取り換える。
最後になにか不備がないか確認すると、美冬はリビングを向き直り誰もいないそこへ向かって深々とお辞儀をした。
そして迷いのない足取りで部屋を後にした。