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籠鳥 ~溺愛~
第13章
「……ごめんなさい」
くしゃりと顔を歪ませて謝る美冬に、鏡哉は小さく首を振って見せる。
「しかしそれはもういい。おかげで私は自分の気持ちに気が付けた」
美冬の腕に舌を這わす。
その動きに美冬の体がびくびくと震える様が愛おしい。
「私は君を離す気はないよ、美冬」
体重をかけて美冬に伸し掛かり、ベッドの上に彼女を縫いとめた。
「鏡哉さん! どうして――」
「どうして? 美冬は私以外をその瞳で見つめる必要はない。その美しい体で誘惑する必要もない。だから――」
「ここにずっといればいい――」
鏡哉はそう耳元でつぶやくと、美冬の首筋に舌を這わす。
「わ、私には学校も、バイトもあります!」
「バイトはする必要がないと何度も言っただろう、悪い子だ」
そう言った鏡哉は美冬の首元に軽く噛みつく。
「やっ! 痛いっ」
美冬が悲鳴を上げる。
噛みついたところは内出血を起こし、赤く染まる。
「学校はそうだな……私が勉強を見るから、大検を受ければいい」
そう断言して美冬を見下ろすと、彼女はさらに顔をくしゃくしゃにして涙を流していた。
「そんなの、駄目……」
力のない声がその細い頤(おとがい)から漏れる。
「何故?」
「……駄目なんだもの」
ぼろぼろと止めどなく零れるしょっぱい涙を鏡哉は舐めあげる。
「駄目なんかじゃない」
ひっくひっくとしゃくりあげ始めた美冬に、鏡哉は導くように言い含める。
「駄目なんかじゃないんだ、美冬」
美冬が鏡哉の瞳を見上げてくる。
まるで、鏡哉に何かを言わせようとする様な懇願する瞳で。
「私たちは愛し合っているんだ。駄目なことなんて何もない――」
その言葉は麻薬だった。
美冬はピクリと体を震わせた後、ゆっくりと瞼を閉じた。
溢れ続ける涙が小川のように流れ落ちる。
そしてほんの僅かに、しかし確実に、こくりと頷いた。
鏡哉が満足そうに微笑んで美冬の体を抱きしめる。
背中に回された美冬の腕に、もう躊躇いはなかった。