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婚約者の帰還(くすくす姫後日談・その1)
第2章 厨房の勝利者

「へ?」
スグリ姫が言われたことを飲み込めないで居ると、女は呆れたように周りの男たちを見回しました。
「あれですよ、あれ。『姫様のお相手が今年中に見つかるか』ってやつですよ」
「あー、あれね………ええええええー!!!」
お祭り好きのこの国の人々にとって、普段から親しみを感じている王室絡みの賭け事は、楽しみごとでありました。
スグリ姫が生まれる時の「王子か姫か」で人々が余りにも加熱しすぎたため、取締りが行われ、賭けが公に行われることは、なくなりました。しかし、下々のささやかな楽しみとしては、あちこちでこっそり行われていたのです。
「いやあ、例のでっけえ果物…『スイカ』でしたか?あの時の仲睦まじい様子を拝見して、ピンと来ちまって」
「…睦まじかったっけ?」
贈り物を渡してくれた男が決まり悪げに頭をかくのを見て、姫は首を傾げ、サクナは眉をひそめました。
「で、その後この兄ちゃ…婚約者様が厨房貸してくれっていらっしゃった、あれが決め手になりやして…厨房全員『今年中に決まる』に、有り金全部、賭けたんでさあ」
「有り金、ぜんぶ……大胆ね、みんな…」
それを聞いた姫は驚きで口が半開きになり、サクナはあらぬ方を向きました。
「…あ。『厨房貸してくれ』って、もしかして、煮リンゴ?」
姫がふと思い出して聞くと、さっきの男が頷きました。
「へい。お作りになってる姿を見て、こりゃあきっと姫様が召し上がるんだな、と」
「作ってる姿?」
「…ええ。」
するとそこで、今まで口を開かずに居た男がぽつりと言いました。
「ありゃあ…ああいうのが、神業ってんですかね」
「…かみわざ?」
「ええ。いいもん見せてもらいやした」
「おい。」
姫がぽかんとしていると、サクナにちょんちょん、と突かれました。
「…そろそろ行くぞ。」
「あ、うん、そうね!」
姫は不機嫌そうな婚約者に応えて、蕩けるように笑いました。
「そういうことなら、これ、ありがたく使わせて頂くわね。奥様にも、すごーく喜んでたって、お伝えしてね!」
そう言って姫は厨房を見回して、見るものが思わず釣られてにこにこしてしまいそうな、輝く笑顔を見せました。
「みんな、ありがとー!また来まーす!!」
厨房の人々に満面のにこにこで見送られ、姫とサクナは、厨房を出ました。
スグリ姫が言われたことを飲み込めないで居ると、女は呆れたように周りの男たちを見回しました。
「あれですよ、あれ。『姫様のお相手が今年中に見つかるか』ってやつですよ」
「あー、あれね………ええええええー!!!」
お祭り好きのこの国の人々にとって、普段から親しみを感じている王室絡みの賭け事は、楽しみごとでありました。
スグリ姫が生まれる時の「王子か姫か」で人々が余りにも加熱しすぎたため、取締りが行われ、賭けが公に行われることは、なくなりました。しかし、下々のささやかな楽しみとしては、あちこちでこっそり行われていたのです。
「いやあ、例のでっけえ果物…『スイカ』でしたか?あの時の仲睦まじい様子を拝見して、ピンと来ちまって」
「…睦まじかったっけ?」
贈り物を渡してくれた男が決まり悪げに頭をかくのを見て、姫は首を傾げ、サクナは眉をひそめました。
「で、その後この兄ちゃ…婚約者様が厨房貸してくれっていらっしゃった、あれが決め手になりやして…厨房全員『今年中に決まる』に、有り金全部、賭けたんでさあ」
「有り金、ぜんぶ……大胆ね、みんな…」
それを聞いた姫は驚きで口が半開きになり、サクナはあらぬ方を向きました。
「…あ。『厨房貸してくれ』って、もしかして、煮リンゴ?」
姫がふと思い出して聞くと、さっきの男が頷きました。
「へい。お作りになってる姿を見て、こりゃあきっと姫様が召し上がるんだな、と」
「作ってる姿?」
「…ええ。」
するとそこで、今まで口を開かずに居た男がぽつりと言いました。
「ありゃあ…ああいうのが、神業ってんですかね」
「…かみわざ?」
「ええ。いいもん見せてもらいやした」
「おい。」
姫がぽかんとしていると、サクナにちょんちょん、と突かれました。
「…そろそろ行くぞ。」
「あ、うん、そうね!」
姫は不機嫌そうな婚約者に応えて、蕩けるように笑いました。
「そういうことなら、これ、ありがたく使わせて頂くわね。奥様にも、すごーく喜んでたって、お伝えしてね!」
そう言って姫は厨房を見回して、見るものが思わず釣られてにこにこしてしまいそうな、輝く笑顔を見せました。
「みんな、ありがとー!また来まーす!!」
厨房の人々に満面のにこにこで見送られ、姫とサクナは、厨房を出ました。

