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ひとりエッチ
第3章 平凡な日常に求めることは

「はぁっ、はぁっ、はぁっ…はぁ〜あ」
やっと地獄の坂道を自転車からおりずに登りきった。
ナツが通う幼稚園の手前の緩〜い坂とは言えども50メートルは続く。
春になると桜並木が満開でピンクの花吹雪と絨毯を見ることができる。
あと2ヶ月先のお楽しみだ。
「ママー、だいじょうぶ?」
わたしが疲れた呼吸をしたせいかナツが心配してくれた。
パパそっくりで笑える。
「大丈夫だよ!」
ナツを自転車からおろし、下駄箱でバイバイした。
「ママー、今日はお弁当なに?」
「ナツの大好きなタコさんウインナー入ってるよ!」
ニカっと太陽みたいに笑うと、階段を駆け上った。
すれ違う他のママさんや先生らに挨拶しながら足早に
自転車に戻る。
そしてわたしはゾッとした。
自転車のサドルにシミがついていたからだ。
そういやショーツもなんだかひんやり感じる。
確実にジーンズにも染みているが、ブラックのロングコートを羽織っていたので誰にも見られていないはず。
ホッとする。
わたし以外自転車をとめている人もいない。
早い時間なのでまだ人も少なかった。
あぶなっ。。。
周りを気にしながらショルダーバッグの中からハンカチを取り出して拭いたものの、消えるわけでもなく、灰色のサドルに10円玉サイズのシミが灰色よりも濃く浮かぶ。
早くこの場所から立ち去りたい!
染み付きサドルにまたがると全速力で坂を下る。
ひんやりとしたパンツの着心地が気持ち悪い。
早く脱ぎたい。
でも、こういう時に限ってこんな事って起こるんだ。
細い住宅街を抜けて信号もない右の角を曲がる時、人に気付いた。が、遅かった。
「きゃっっっ!」
「うわぁっ!」
キキキーッ! どんっ ガッシャーン!
自転車ごとアスファルトに叩きつけられたわたし。
同じように目の前には倒れている人がいた。
血の気がサッとひくのがわかった。

