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王家の婚礼(くすくす姫後日談・その2)
第1章 婚礼前夜

「まさか……まさかバンシルっ、サクナの裸…見たこと、あるのっ!?」
「……………は?…ぁあああああ……」
聞いた瞬間、バンシルは姫が何を言っているのか全く分かりませんでしたが、理解が脳に到達した途端、口から盛大な溜め息が出ました。
「…姫様…本っっ気で、本当に、馬鹿なんですか…」
バンシルは呆れ過ぎて白目になりそうになりましたが、職務に忠実であったので、危ういところで踏みとどまりました。
「…あんなもん、脱がなくたって、見りゃ分かるでしょう…」
たとえ姫が極度の婚約者馬鹿であっても、この馬鹿馬鹿しい疑いは、断じて晴らしておかねばなりません。うんざりと脱力を同時に感じながらも、バンシルは姫に応えました。
「う…私は…私はっ!脱いで触るまで、分からなかったもん!!!」
「あーはいはいはい、惚気はお腹一杯です。」
スグリ姫は一瞬枕から顔を上げ、何を思い出したのか真っ赤になり、また枕に顔を突っ込んで、うーうー唸りながら悶えました。
「もしかしたら、兄が似たような仕事なんで、分かるのかもしれませんね。ああいう体型見慣れてるんですよ、多分」
「…ああ!畑と鶏の、お兄さん?この前、赤ちゃんが生まれた!」
バンシルの家は農家です。
兄弟はそれぞれ仕事を分担していて、サクナと同じくらいの年の長兄が、畑と養鶏を担当しておりました。
バンシルが兄のことを引き合いに出したので、スグリ姫は「そんなものなのねー、慣れなのねー」と、ようやく納得したようでした。
「そう言えば、あの正装、用意も大変だったらしいですよ。一から仕立てるのは時間が取れないってことで、今回はどなたのかを直そうってことになったらしいんですけど。ハンダマ様は論外、王様が昔お召しになっていた服でも合わなくて、大臣様の昔のお召し物を譲り受けて直したそうで…合わせるのに苦労したって、お針子がこぼしてましたよ」
芸術を愛するハンダマ王子は木工が趣味のスグリ姫より腕力が無く、父王はそこそこ筋肉はありますが、武術よりは学問の方が得意です。そこへ行くと王の腹心の大臣は、剣と弓の嗜みがあり、体を動かすことが得意だったので、体型的に一番近かった様でした。
「バンシル。」
「はい、なんですか。」
姫の声が悶え騒ぐ物から真剣なものに変わったので、バンシルは思わず、何事かと身構えました。

