パソコンから！ケータイから！スマホから！無料でどこでも気軽に楽しめる官能小説サイト

第1章 一週目

「姫様、お加減いかがですか」
「…おきれない…もっとねる…」
「ゆっくりなさいませ。薬湯飲みますか？」
「のまない…のんだらはく…なにものみたくない…」

「お水くらいは、飲んだ方が良いんですけどね」
バンシルは、仕方がない、というように、溜め息を吐きました。
「起きられそうになったら、呼んでくださいね。」
「ん」
スグリ姫は、ありがと、と唸りながら、寝返りを打ちました。
「多分、いつものように、明日くらいにはよくなられますよ。おやすみなさいませ」

スグリ姫は月の物で、昨日から寝込んでおりました。
普段は重い方ではないのですが、心労のせいもあるのでしょうか。今回の姫の様子は、ひどく辛そうでした。
スグリ姫の婚約者であるサクナが仕事のために郷に帰ってから、一週間ほど経とうとしています。姫はサクナが帰ったあとも、普段通りに振舞ってはいましたが、部屋で一人で居るときなどは、ぼんやりしていることが増えていました。

「バンシル…」
「なんですか？」
部屋を出ようとしていたバンシルは、小山のようになった布団から聞こえてくる声に、歩み寄りました。

「また、あかちゃんいなかった…」
「姫様。」
バンシルは小山をとんとん叩きました。
「出来てたら大事ですよ？婚礼はまだ先なんですから」
「おおごとでも、いいんだもん…」
呟きながら更に小さくなっていく小山を見て、バンシルはまた溜め息を吐きました。

「そればっかりは、誰にもどうにもできないですよ。あんまり仲良くし過ぎても出来ないことがある、って言ったりしますからね」
「…うー…」
スグリ姫は布団の中から、バンシルの話に納得していないのか、お腹が痛いのか、それとも気持ちが悪いのか、よく分からない唸り声を上げました。

「とにかく、体が辛いときに考えることなんて、ろくなことじゃありませんよ。何も考えずに、寝てください」
「…ん。」
「ハンダマ様や大臣様がお会いになりたいっておっしゃってましたけど…お元気になるまで、待って頂きましょうね。」

ゆっくりおやすみなさいませ、と布団をとんとん優しく叩いて、バンシルは部屋を出て行きました。