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アムネシアは蜜愛に花開く
第1章 プロローグ
わたしの両足が強引に開かされ、巽のいきりたつ雄々しいものが、わたしのショーツを横にずらしてねじ込まれた。
未開で滑りのない狭い中は脈打つ灼熱の杭を押し返すが、巽は苛立ったように力任せに抉るように押し進める。
目の前で、浴衣の椿のような真っ赤な花が、鮮烈に散った。
まとめた黒髪が解け、仰け反る身体に合わせて大きく波打つ。
わたしは――目を瞑った。
抵抗しないですべてを黙秘する代わりに、一筋の涙を流しながら。
これは……合意だ。
いつからだろう。わたしは、男として彼が好きだった。
彼の身代わりに、彼の面影によく似た彼氏を作って今日、処女を捧げようとしていた。
巽への想いを断ち切るために。
愛のない暴力と痛みの初体験は、血が繋がらないとはいえ、弟に恋情を抱くようになった罪深いわたしへの罰なんだろう。
それでも――。
この痛みにも、こんな乱暴な動きにでも、彼と繋がったこの歓喜は忘れない。
巽にはただの性衝動でも、わたしには愛ある行為だと思ってしまうことを、どうか許して。
「ああ、くそっ、なんでこんなにいいんだよ、お前の中っ」
「――っ、――っ!!」
「お前、なんなんだよ!!」
痛みにも口を閉ざし、男としてわたしを深く貫く彼に座位にて揺さぶられながら、わたしは見た。
……彼の背後に、鬼の形相をした義母が立っているのを。
いつの間にか、蝉の音は止んでいる。
代わりに、かさり、と……アムネシアの花弁がひとひら、机に落ちた。
それは今から、十年前のこと――。