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囚われる…
第4章 馨…
1DKの狭い部屋だというのにご丁寧に8箇所も仕掛けられている。
当然、カメラもあるんだろうな…。
ため息が出る。
安全の保証はしない…か…?
馨の言葉が重くのしかかる。
手が震える。
心底から湧く恐怖に震えが止まらない。
ばぁちゃん…。
連絡をしたいが連絡をすれば危険になる。
ばぁちゃんからの着信歴はなかったから一応は無事なんだろう。
荷物を軽くまとめて再び家を出た。
車は使わずに電車で移動をする。
銀行に行き有り金の全てを引き出した。
銀行の口座を解約もした。
銀行の窓口は驚愕をしていたがこの日本に俺が信用を出来る銀行なんか存在をしないと思った。
次は空港へと向かう。
タイ行きの飛行機にいきなり乗る事にした。
ビザ無しで30日は行ける。
向こうにならば知り合いも居るから潜伏をする伝手もある。
今はこの平和な国から逃げ出す事を考える。
馨…、本気でお前の存在が怖えよ…。
とにかく逃げなければ…。
それだけで頭がいっぱいだった。
金の持ち出しですげー税金を取られた。
それでもなんとか飛行機には乗り込めた。
早く…、早くこの国から出してくれ…。
祈るようにして離陸を待つ。
離陸が少し遅れるというアナウンスに泣きそうになって来る。
頼む…!
ひたすら祈り続けた。
ドサッ…
と乱暴に俺の隣の席に男が座った。
「飛行機が怖いのか?」
今一番見たくない顔があった…。
「馨…。」
この飛行機から降りたくなる。
『お待たせ致しました。当機は間もなく離陸を致します。シートベルトの着用を…。』
冷静な離陸のアナウンスに何故か怒りを感じた。