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囚われる…
第5章 許されない逃亡…



身体の震えが止まらなかった。

飛行機は無事に飛び立ち、俺の逃げ場はどこにもないと悟るのに2秒もかからない。


「顔色が悪いな…、飛行機が苦手なのか?」


馨が俺の顔を撫でて来る。

優しく動く手…、穏やかな口調…。


「馨…。」


何故…、ここに居るんだよ?

そう思った瞬間だった。

馨の目付きが変わった。

冷たく…、殺気を感じる。

殺される…。

そう思った。


「どこに行くつもりだ?」


重く低い声…。


「あ…、あぁ…、なんかさ、すげー疲れたからしばらく旅行でもしようかと思って…、タイのパタヤなんか安くて良いリゾートだから行ってみたかったんだ。」


完全に狼狽えた言い訳…。


「そうか…。だが俺から離れたら安全の保証がしてやれないだろ?」


全く笑っていない目で馨が笑顔を作る。


「あぁ…、そうだったよな…。」


冗談っぽく言わないと気が狂いそうになる。

お前から逃げたいんだよ!

本当はそう叫びたい。

シートベルトの着用サインの灯りが消えた。


「俺の席に行こう…。」


馨が俺のシートベルトを外す。

俺の唯一の荷物を馨が取り出して俺の肩を抱くようにして飛行機の狭い通路を抜ける。

好奇の目は向けられるが誰も不審がって馨と俺に声をかけて来る奴はいない。

客室乗務員ですらスルーをしている。

誰も俺を助けてはくれない…。

狭い飛行機の中で俺は逃げる事も出来ずに誰の助けもなくただ馨に縋るしかないんだという恐怖が頭に刻み込まれる。

飛行機の前に移動をする。

完全個室のロイヤルファーストクラス…。

フルフラットのシートが2つ…。


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