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囚われる…
第6章 世界のバランス
「だが、頭になればこの世界を知る事になる。この世界に自分の全てを奪われたと後でわかれば頭なんかにならないかもしれないだろ?」
「この世界がお前の全てを奪ったという事実だけは完全に闇に葬られる。お前はただ、山内の跡取りとして莫大な権力を手に入れる事になると教えられてここに来る予定だった。」
そりゃ、そうなる。
警視総監と並んで酒を飲む立場になるのなら、よほど無茶な犯罪を犯さない限り逮捕をされないという立場で闇社会のトップに立てるという事だ。
欲がある人間なら不幸の後の幸運としてそれを素直に受け入れる。
そして…、自分が引退をする時には、この店が決めた次の跡取りに引き渡しをして終了だ。
馨が跪き唇が俺の尻にキスをする。
「その予定が何故、変わった?」
尻を割れ目を馨の指先で広げられる。
「俺が匠を欲しくなったからだ。」
愛がない馨からの愛の告白に恐怖が薄れて、身体の中から熱いものだけがこみ上げて来る。
尻の割れ目に舌が這う感覚にうっとりとかしてしまう。
「そんなに俺が欲しかったのか?」
少し嬉しくて、高ぶる気持ちを押さえられずに期待を込めて聞いてみる。
「だって…、お前…、戦災孤児だろ?」
無造作に心臓を鷲掴みにされた。
一気に血の気が引き冷めた身体が震え出す。
再びの恐怖が始まった。
「なっ…!?」
「親は医者だった。だが普通の医者じゃなかった。」
今度は恐怖よりも怒りがフツフツと湧いて来る。
絶対に話したくない過去…。
誰にも言いたくない過去…。
そして、誰にも知られたくない過去の話…。
思わず、馨を払い除けて振り返る。
馨は俺のヘソの下にキスをする。
「俺に触るな!」
そう叫んで床に落ちていたTシャツを拾い上げようとした。
すぐに馨が俺の手をマジックミラーの壁に押し付ける。
「離せ!」
「落ち着け!落ち着け、匠…。俺もお前と同じ戦災孤児だ…。」
馨の言葉に身体が竦む。
「大丈夫…。大丈夫だ、匠…。」
馨がゆっくりと俺を抱きしめて髪を撫でて来る。
馨が…、なんだって?
目眩がして馨の腕の中に崩れ落ちていた。