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囚われる…
第7章 忘却の彼方…
あの頃の事は思い出したくなかった。
俺の両親は2人とも医者だった。
しかし、普通の日本の医者じゃなかった。
いわゆる国境無き医師団的な存在…。
戦火の真っ最中という国へわざわざ出向き、その病院で空爆に傷ついた一般人の治療をする。
俺は毎日、ベビーシッターと留守番…。
一応、日本で生まれた日本人だが、10歳までは普通に現地の小学校へと通っていた。
ある日、両親が居た病院が空爆を受けた。
まさかの攻撃だった。
戦火は末期の状況で、両親を失った俺はすぐに大使館の人間に保護を受け日本へと帰国をした。
父親の実家は開業医だ。
初めて会った父親方の祖母に
「あの女が悪いのよ!あの女が息子をあんな国に連れて行ったからこんな事になったのよ!」
と責められた。
確かに戦地での治療を希望したのは母親の方だったのかもしれないとは思う。
ただ、問題はこの時の俺はほとんど日本語が出来ない子供だったという事だ。
学校も当然、インターナショナルスクールじゃないと受け入れて貰えない子供…。
父親方の祖父母が俺の引き取りを拒否した為に母親方の祖母に引き取られた。
祖父はもう亡くなっていた。
だが、ばぁちゃんは強い女だった。
漁師だった祖父を支えていたばぁちゃんは漁業組合で働き、俺を育ててくれた。
かろうじてインターナショナルスクールを卒業はしたが、インターナショナルスクールの場合、日本では義務教育として認められていない。
一部の私立高校などインターナショナルスクールからでも受け入れをしている高校はあるが、ばぁちゃんと住んでいた田舎町じゃ、そんな高校は望めずに俺は専門学校でカメラを学んだ。