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囚われる…
第7章 忘却の彼方…
カメラマンにはなんとかなったが、簡単に食べていける世界じゃない。
だから…、戦場カメラマンになった。
戦地には慣れている。
日本語と英語とアラビア語が使えるカメラマンだから容易く仕事が貰えた。
そして、何度目かの戦場から日本に帰国をした時だった。
「お願いだから…、もう行かないでくれ。せめて、ばぁちゃんが生きているうちはもう戦場には行かないでくれ。日本は平和な国なんだから…。」
ばぁちゃんから泣きながらそう言われて戦場カメラマンを辞めていた。
しばらくは遊んで暮らせるだけの金は稼いでいたから問題はなかった。
フリーライターとしてチビチビと小さな仕事を貰う生活をした。
ばぁちゃん家には月に1度くらい顔を出してばぁちゃんを安心させる事ばかり考えた。
そんな時に馨と出会ってしまった。
その馨が俺と同じ戦災孤児だとか言い出す。
なんの冗談だ!?
この平和な日本に戦災孤児は俺だけのはずだ。
大使館の人間や父親方の祖父母ですら戦災孤児である俺の存在を平和な日本じゃ迷惑な存在だという扱いをした。
俺のメンタルのケアをしようにも、平和な日本に戦災孤児のメンタルを診察して治療を出来る医者なんか存在はしない。
だから…、ばぁちゃんだけが俺の全てだった。
言葉が通じない俺に根気よくばぁちゃんは日本語を教え続けてくれた。
その唯一の戦災孤児という孤独を味わった人間がもう1人居る…。
一体、それは何を意味するんだ?
思い出したくない過去が掘り起こされた挙げ句に同じ奴が居るという謎の事実が叩きつけられた。
馨…。
お前は一体何者だ?
頭が混乱をするばかりで考えが全くまとまらない。
馨…。
お前を知りたい…。
だけどお前を知るのが怖いよ…。
その恐怖に耐えられないと思った。