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SNSの甘美な罠
第5章 急変
黄昏時の薄暗く紫色に色付いた空の下を女が歩く。変わっている事と言えば、灰色のロングカーディガンの下はロングブーツのみで一切服を身にしていなかった。
足音はコツコツと響き、身体だけを映していたアングルが徐々に周りの風景を映すべく、女の身体から離れていく。
住宅が軒を連ね、時折看板が映り込む。女は口許までしか顔を映さなかった。その口許が大きく歪んだ時、男は思わず足を止めた。
背景に映し出されたのは、男がつい先程まで居た職場そのものだったのだ。
男が先に抱いたのは、“何故?”という疑問。
女とは素性を明かさないまま逢っていた。だからこそ、疎遠になった所で特に何も問題は無いと考えていた。
だが、静止したままの画面には女の歪んだ口許と、見間違う筈も無い自身の職場が映る。
夢ではないと認識した時、あれだけ暑さを感じていた身体が薄ら寒くなり身震いした。
恐怖が次第に男の身体を包み込んで、毛が逆立っていく。