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SNSの甘美な罠
第5章 急変
背後でコツコツと、アスファルトを打ち鳴らす音が聞こえた時、男はいてもたっても居られずに手にしたスマートフォンをポケットにねじ込んで、背後から迫る足音から逃げる様に歩みを進めた。無意識の内に喉が鳴る。その足が次第に速くなり息が苦しくなった頃、自宅に灯る明かりに今まで覆っていた恐怖が和らいで、安堵せずにはいられなかった。
自宅に帰っても、暫くスマートフォンを触る気にもなれない。男は早々に身の回りの事をこなして、先程の動画の事を忘れようと努めた。
そうして、再びスマートフォンと対峙する。
まず行ったのは、女からのメールを受信拒否。そして次に女との痕跡を全て消去した。動画もメールもアドレスも全て消去した後、男はそこで深い溜め息を吐いた。
これでもう大丈夫。そう思い込む事と心の平穏を保つ為、愛しい彼女へと電話を掛けた。