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第10章 真実

とにかく謝ろう…。

謝るしか出来ないのだし…。


「だから…、ごめんなさい！」


昌さんの沈黙に胸が痛くて堪らない。

またしても、ため息を吐く昌さん。

お布団に居る私の前に胡座をかいて座って来る。


「彼氏とデート中だったんじゃないのか？」


そんな嫌味を言われるとは思ってなかった。

フレンチレストランじゃ全く私に気付いてないように見えたけど、しっかりと植草君の事見てたんだ。

結果的には私が悪いんだけど、こういう責められ方は気に入らない。


「彼氏じゃないもん…。」

「梓は彼氏じゃない男と道路のど真ん中で抱き合う趣味があるのか？」

「あれは…、だから…、違うもん！」

「梓は隙だらけなんだよ！だから岡部みたいなのに騙されんだろ？」


それは事実だけど…。

泣きたくなって来る。

なんで、それを昌さんに言われるの？

だったら昌さんは私の何？

親？保護者？

腹が立つ。


「昌さんには関係ないです…。」


一番言いたくない言葉を言ってしまう。


「だったら、なんでわざわざホテルまで追いかけて来た？」


昌さんが灰皿を引き寄せてシガリロに火を点ける。

甘い香りが漂う…。

その香りを追いかけた。

その香りから離れたくなかった。

だから…。


「その香りが嫌い。その香りは昌さんを思い出すから大嫌い！その香りのせいで悲しくなる。だから、昌さんなんか…！？」


大嫌い！

そう叫ぼうとしたのに口を塞がれる。

身体中を昌さんの甘い香りが包む。

弄ぶように唇が唇で甘噛みをされて舌で湿らすように舐められる。

キス…、なんでするのよ？

風俗の人は本命にしかキスをしない…。

昌さんはそのルールに背き私を恋人としてその気にさせる為のキスをした。

その契約はもう終わった。

なら今のこれは何のキス？