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イかせ屋…
第2章 取り立て
日暮れに雄君が目を覚ます。
「夕飯の買い物に行って来る。」
起きた雄君にそう言って部屋を出ようとした。
無一文の彼氏だから別れて直ぐに部屋から追い出すにしても今夜のご飯くらいは食べさせてあげようとか情けが出てしまう。
「あー、漫画とタバコも頼む。」
いつもの感覚で雄君が言う。
私が失業をしたという事実を未だに現実として受け入れてないのだと確信をする。
漫画は今日発売の週刊誌。
それに私は吸わないタバコ…。
ため息をついて家を出る。
日暮れの商店街。
誰もが幸せそうに見える。
私にもそんな時があった。
雄君がオーディションを受けると言う度に喜んだ。
一次審査の写真では毎回通過する。
つまり、それだけ男前…。
でも、二次審査のパフォーマンスになると必ず落ちて帰って来る。
つまり、才能がない…。
オーディションの度に散髪に行き服を買う。
お金がかかる。
全てが私のお金。
時々、パチンコで買ったとか言ってはお金を持って帰って来て食事を奢ってくれる。
「外で食事とか勿体ないから貯金をしなよ。」
そうは言っても
「梓に苦労ばかりさせてるから、この位は、たまには良いじゃん?」
で終わらせる。
パチンコのお金でかっこいい事を言われてもかっこいいとは感じない。
よく4年も我慢をしたと自分で思う。
それも今日で終わり、会社も倒産をしたのだから私は新しい自分になる。
サバサバとした気分で買い物から帰る。
部屋に戻ると違和感を感じる。
えっ?
部屋が妙に片付いて見える。
小さなガラステーブルにはいつもなら、だらしなくタバコの吸い殻が剣山のように刺さった灰皿があるのにそれが洗われて台所に伏せてある。
ベッドと反対側の壁には常に立て掛けてあるギターがない。
綺麗に片付いたガラステーブルには一枚のメモ…。
『出て行く。』
たった一言のメッセージ…。