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アゲマン!
第5章 可愛げのない謎

沙那が退屈をしてあくびをした頃に龍平が車に戻って来た。
「ギリギリだった。」
そう言うと龍平は車を出し、フェリー乗り場の車の列へと並び出す。
3連休だから、九州行きの夜行フェリーの利用客がかなり多いらしい。
季節は紅葉の季節…。
温泉地である沙那達の目的地にはかなりの観光客で賑わうシーズンだ。
無事にフェリーに車を乗り込ませ、車輪止めを受けると龍平は沙那を連れてフェリーの客室へと向かった。
「なんで!?」
フェリーの客室で沙那が叫ぶ。
「仕方ねぇだろ?」
龍平はふてくされるように言い返す。
客室は1つ…。
しかも、ベッドはシングルベッドのみ…。
タダでさえ混んでいる上にギリギリの時間にチケットを取った龍平達にはこの部屋しか空いていなかったのだ。
「変な事しないでよ…。」
「なんか変な期待をしてんのか?」
「誰が!?」
「可愛くねぇの…。」
龍平がニヤニヤとするから沙那は少しムッとした。
「龍平さんが可愛いと思う女の子ってどんなのよ?」
膨れっ面で沙那が聞く。
「あー…、どうだろな?一般的に言うならお前の友達なんか可愛いってタイプじゃねぇの?」
ぶっきらぼうな龍平の言葉に沙那の胸の奥がチクリとする。
みんな…、美春が可愛いんだ。
それは沙那もわかっている。
無邪気で破天荒な美春は間違いなく可愛い女の子だ。
対する沙那は美人タイプだ。
スラリとした長い足、くびれたウエスト、少し大きめのバスト。
キリッとした気丈な顔立ち…。
美春は沙那がモデルみたいだと羨ましがる。
しかし、沙那のそういう、他の人間を寄せ付けにくい気丈ぶりが男性から見ると可愛くないと感じさせているのだとは奥手の沙那にはわからない。

