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アゲマン!
第1章 始まった謎
つまり、沙那の母親は自分が死ぬという事実を何年も前から知っており、自分自身で万全に死ぬ準備をした上に、それを本当の意味で最後まで沙那に隠し続けて来たという事だ。
何故、そこまで母親が自分に対して秘密主義を貫き通す必要があったのかが理解を出来ない沙那は母親の為に泣く事すら出来ないという気分にされた。
沙那と美春はマンションのそばのコンビニでジュースやサンドイッチなどの軽食を買い、沙那の自宅へと向かう。
2人で交代でシャワーを浴び、リビングに買って来たサンドイッチを並べて遅い夜食を食べ始める。
「明日は何時だっけ?」
美春がサンドイッチを摘みながら沙那に聞く。
「火葬が最終の3時だからお寺さんのお経が1時からって葬儀場の人が言ってたわ。」
従って、明日は昼までに先ほどの葬儀場に行けばいいと沙那は思うだけだ。
「お母さんの遺言…、なんだった?」
美春が普通ならば少し図々しいと思われる質問を沙那にした。
普段から母親の秘密主義について美春に愚痴を零して来た沙那だから、その秘密主義に美春が興味津々なのも理解をしている。
美春はミステリー好きの女の子。
沙那もミステリーは好きだから、美春とは馬が合うという理由でいつも一緒に居る存在だ。
「いつもの謎だけを遺してくれたわ。」
沙那はサンドイッチを親の敵のように睨みながら齧りついた。
「また?沙那のお母さんってそんなに謎をいっぱい遺して何がしたかったの?」
「さぁ?」
何がしたかったのかすらわからない謎の母親…。
その謎が簡単に解ければ苦労はしない。
母親が沙那に対して徹底をした事は1つだけ…。
幼稚園から短大までエスカレーターになっている学校を無事に卒業をするという事…。
その学校の幼稚園から美春とはずっと一緒に育って来た仲だから、沙那にとっては美春は他人ではあるのだが、唯一の肉親的な存在だと言っても決して過言ではない。