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アゲマン!
第5章 可愛げのない謎

「おあ?」
不機嫌な龍平が沙那に向かって振り返る。
「どこ行くのよ?」
泣きそうなまま俯いた沙那が問う。
「タバコだよ、タバコ…。どこもかしこも禁煙禁煙でタバコを吸えるエリアがこの馬鹿デカイ船で2箇所しかねぇんだよ。」
龍平のイライラの原因はタバコの事だ。
車では吸わない主義の龍平は今日はほとんどタバコを吸っていない事に沙那は初めて気付いた。
「一緒に…、行っていい…?」
龍平のそばにいないと落ち着かない自分がわかる。
「気持ち悪いんだろ?先に風呂にでも行ってから寝ててもいいんだぞ。」
龍平が沙那の顔を上げるようにして指先で顎のラインを撫でて来る。
「一緒に居たいから…。」
「そうか…。」
ゆっくりと龍平の顔が沙那の顔に近付くと沙那の唇に龍平の唇が重なった。
少し強引で貪るようなキス…。
口を開けられて沙那の口の中へと龍平の舌が入って来る。
沙那の舌を求めるような動きに、不慣れな沙那も自分の舌を少しだけ龍平に差し出した。
その舌を吸うようにして龍平の舌が絡んで来る。
そんな激しいキスに経験のない沙那は龍平にしがみつき、熱くなる頭の中がボーッとしてしまう。
「お前だって…、充分に可愛いじゃん。」
キスがゆっくりと離れて龍平が呟くようにそう言う。
全く、抵抗が出来なかった…。
そのまま龍平はまるで沙那は自分の女だというように沙那の肩を抱いてフェリーの廊下を喫煙所に向かい出す。
龍平は普通の素振りだが、沙那はもう頭の中が真っ白になっている。
どうしよう…。
この人は拒否を出来ない。
別に沙那が龍平を好きならば拒否をする必要はないのだが、沙那は龍平が沙那の能力を目当てにしているのなら拒否をしなければならないと頭でっかちに思い込んでしまっている。

