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アゲマン!
第5章 可愛げのない謎
どうしよう…?
そんな事ばかり考える沙那に
「気持ちが悪いのなら、やっぱり部屋で待つか?」
と龍平が優しく聞いて来る。
ふるふると沙那は横に首を振るしか出来なかった。
喫煙所…。
沙那の肩を抱いたまま、龍平はタバコに火を点けてゆっくりと煙を吹かす。
無駄な事をほとんど話そうとはしない龍平だから、沙那だけが緊張をしてしまう。
実際、車の中でも龍平は黙ったままで沈黙に耐えられない沙那だけが一方的に美春の話ばかりをしていたという状況だった。
龍平はここぞとばかりに2本目のタバコに火を点けて喫煙を堪能しているように見えるから、今回は沙那は何も言えないまま龍平の横顔を眺めるだけだ。
日本人離れをした彫りの深い顔…。
Tシャツの上からでもわかる鍛えられた身体…。
龍平は探偵だと言ったが、そもそも沙那の母親が呼ぶまではアメリカに居たと言う。
何故、理奈はわざわざアメリカに居た龍平を日本に呼び出したのか?
龍平の事を何も知らない沙那は、理奈が遺した謎よりも龍平を知りたいという好奇心の方が強くなる。
「やっと落ち着いた…。お前は大丈夫か?」
龍平がニヤリと笑って沙那を見た。
タバコに満足をした龍平が子供みたいな顔で笑っている。
沙那の胸の鼓動が激しくなり、沙那は目眩を感じる。
「部屋に戻るか?」
機嫌がいい龍平の優しい言葉…。
沙那は小さく頷いて答える事しか出来ない。
部屋に戻ると龍平が
「そろそろ、風呂を済まさないと船内じゃ風呂の時間も決まっているからな。」
と言い、沙那の頭を軽くポンポンと叩くように撫でると沙那から離れていた。
沙那だけが狼狽えてしまい、顔を真っ赤にしている自分を龍平には知られたくなかったので、着替えを持った沙那は船内の大浴場に向かう為に客室から飛び出すしかなかった。