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アゲマン!
第9章 寂しい謎
「真希さん…?」
そう言った沙那に真希がニヤリとする。
沙那の方はその笑顔にゾクリとする。
「覚えててくれたんだ…。」
真希が嬉しそうに言いながら沙那に近付いた。
あの謎の店『Locate』に来た数少ない客をそんな簡単には忘れるはずはない。
しかし、ここにその客が居るという不自然に対して沙那は警戒を解く事は出来ない。
身内ですら沙那を監禁したのだから…。
沙那は近付く真希に気丈な顔を向けた。
「何故、こんなところに?」
真希の眉が微かに動く。
真希は沙那の警戒心を察したようだ。
「仕事でこの近くに来たら、偶然に見つけたんだよ。あのお店はもう開いていないし、僕としては結構感動の再会に期待をして声を掛けたんだけどね…。」
爽やかな笑顔を崩す事なく、真希が沙那にサラリと答える。
だがその目は笑っておらず、獲物を狩るハンターのような目に沙那は警戒心を崩せない。
財閥の一族とはいえ、この若さで大企業の専務にまで登り詰めた真希という男は相当に優秀で野心家な男なのだろう。
その野心を沙那には何故か本能的に感じてしまう以上はこれ以上は真希には近寄るなという警告が頭の中でランプを灯す。
人の欲に応える為のアゲマンなのだとすれば、その野心や欲を感じる力が沙那には人一倍備わっているのだという事だ。
近付く真希にじりじりと下がる沙那。
「そんなに警戒しないでよ。別に君に乱暴な事をするつもりはないよ。むしろ、お互いにとってもいい付き合いを僕はしたいと思っている。」
真希はゆっくりと話を切り出して来た。
「お互いにとって?」
沙那は鼻で笑いたくなる。
真希は自分の野心の為に沙那を利用しようとしている。
そこには沙那の為という気持ちは全く感じられないと沙那は思った。